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株式会社SET(大阪府大阪市)

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株式会社SET
(大阪府大阪市)

【写真】杉田さん 株式会社SETは2004年(平成16年)創業。金融や保険、製造・物流業界をメインに業務システムを開発しているIT企業である。
従業員数は19名(2025年7月現在)。従業員の約半数が20歳代であり、その他も30歳代・40歳代が多く、若手中心の年齢構成となっている。
今回は、代表取締役社長の杉田文彦さんからお話を伺った。

小規模事業者でも、ストレスチェックを実施し、高ストレス者に対する医師による面接指導が受けられる仕組みを導入するなど、従業員の健康課題に積極的に取り組んでいる。

最初に、健康経営に取組むきっかけと、ストレスチェックや産業医面談などの実施状況についてお話を伺った。

会社経営での最優先課題は従業員の健康であると認識し、健康経営に取り組み始めました 「当社の主な業務はシステム開発ですので、客先に常駐して作業を行うことも多くあります。その場合は客先に直行直帰となり、従業員の健康状況を把握することが難しいため、従業員の健康面に配慮する方法が何かないかと考えていました。その頃、偶然“健康経営”について話を聞く機会があり、会社経営での最優先課題は従業員の健康であるということを再認識し、私(杉田さん)自らが責任者兼担当者となって、健康経営に取り組むことを決めました。」

「会社として健康経営に取り組むことを従業員全員に伝え、2020年11月に“健康宣言”をし、取組内容とともに公開しました。2021年からは、5年連続で“健康経営優良法人(中小規模法人部門)”の認定を受けることができ、2022年には“ブライト500”、2025年には“ネクストブライト1000”の認定もいただきました。」

小さい会社ですが、法に基づくストレスチェックと高ストレス者への医師による面接指導をはじめました 「健康経営の取組みとして、まずはストレスに関する調査の実施から始めました。IT業界では、従業員の健康課題の中でもメンタルヘルスが特に課題となっていることを認識していましたので、当社もまずはメンタルヘルスから取り組むのがよいだろうと考えました。具体的には、ストレスに関する調査を無料で受けることのできるWebサイトを従業員に案内し、その結果を一人ひとりが総務部門の担当者に提出してもらう、という流れで行いました。私(杉田さん)には一人ひとりの結果は報告しないということを共有して実施したので、結果はもちろん分からないのですが、高ストレスに該当する者はいなかったという報告を担当者から聞いて、まずは安心しました。」

「ただ、無料で利用できるシステムですと、過去履歴を残すことができなかったり、今後、高ストレスに該当する者が出た場合に十分な対応ができなかったりと、より実効性のある取組みにするためには不十分だということも1年目に実感しました。そのため、2年目からは、労働安全衛生法に基づくストレスチェックを実施することにしました。ストレスチェックサービスは多くの事業者が提供しているため、費用面やサービス面などどう選べばよいか分からなかったのですが、名刺の印刷をお願いしている業者がストレスチェックサービスも行っているということを知り、費用面も比較的安く感じたので、2022年から利用することにしました。Webで実施しています。」

「ストレスチェックを本格的に実施する際には、私(杉田さん)から従業員に、実施の意義と実施体制を説明しました。実施の意義については、一般的な内容に加えて、自分自身の状態を知ってほしいから素直に受けてほしい、と私の想いを率直に伝えました。」

「ストレスチェック実施者は、ストレスチェック業者の医師にお願いしています。実施事務従事者は、総務部門の担当者が担っています。高ストレス判定を受けて実施者が医師による面接指導が必要だと判断した場合は、本人に直接通知しています。これまでの3年間で、医師による面接指導を受けた方が2名います。面接指導後は、事業者である私(杉田さん)にフィードバックをいただき、会社側のフォローアップが必要な場合は対応できる体制にしています。」

長時間労働者や気になる従業員に対しては産業医とのスポット面談を行っています 「2024年には、ストレスチェック業者の紹介で、産業医にスポットで面談を依頼できる契約(月契約ではなく面談1回ごとに支払うもの)をしました。当社は従業員数19人ですので産業医の選任義務はありませんが、心配な従業員のフォローが適切にできる体制にしたいと考えました。これまで、残業時間の多い従業員や気になる従業員に対して産業医面談を依頼し、実施しました。産業医面談後は、本人の同意を得られた範囲で私(杉田さん)へのフィードバックも受けており、会社として必要な対応がある場合は実施しています。」

社長が従業員を大切に考え取り組んでいることが伝わっており、会社設立後20年間の自己都合退職はゼロ、採用活動時のPRにもつながっている。

次に、社内コミュニケーションの活性化の取組みや、採用活動における健康経営の効果などについて、お話を伺った。

月1回社内全体ミーティングの時間を設けることで、全員が顔を合わせて話ができる時間を確保するなど、風通しのよい雰囲気づくりを心がけています 「月1回、社内全体ミーティングを行っています。その日は、客先に常駐している従業員にも会社に来てもらい、リモートワークの従業員もオンラインで参加し、全員が顔を合わせる時間にしています。社内全体ミーティングでは、業務の進捗状況に関する情報交換に加えて、定期的に実施している健康習慣に関するアンケートについて説明する時間を設けたり、ストレッチなどの健康セミナーを実施することもあります。その後、自由参加の懇親会も行っており参加者も多いです。日頃、別々の現場で仕事をしていることが多いので、社員同士の壁を無くす機会にもなっています。」

「日頃から風通しがよくコミュニケーションしやすい雰囲気づくりを心がけています。具体的には、上下関係が堅苦しくなくフラットな関係性を感じてもらえるよう、上長や先輩後輩関係なく、全員“さん”付けで呼ぶようにして、分け隔てなく交流できるようにしています。なんでも話しやすいのは働く環境として大事な要素だと考えています。その結果、入社したばかりの方にも、皆が気軽に話しかけたり気にかけたりすることで、職場の雰囲気に早く馴染んでもらい、会議などでも自ら発言するようになってきています。従業員皆で、メンタルヘルスケアのフォローができるような体制となるようにしています。」

従業員からの意見を取り入れることで福利厚生と共にご家族とのプライベートの充実にもつながっています 「職場をより良くしていきたいという従業員からの意見は、積極的に取り入れています。例えば、『スポーツジム利用に関する福利厚生を導入してほしい』という意見があった時には、施設利用料の半額を会社で負担する制度を、新たに設けました。デスクワークが多い仕事なので、従業員が身体を動かすきっかけにもなると考えました。従業員だけではなく、ご家族にも適応される制度としたので、休日などに家族と一緒に楽しめているようで、プライベートの充実にもつながっています。」

健康経営に積極的に取り組んでいることが当社への応募動機となっているようです 「採用活動も積極的に行っています。以前は中途採用のみでしたが、2022年からは新卒採用もはじめました。毎年2名程度採用できています。会社説明会では私(杉田さん)が率直に話をするようにしているので、この社長の下で働くんだ、というイメージがしやすいようです。採用の際は、その時点でのITスキルよりも、自分の考えをしっかりもって発言できるか、といったコミュニケーションスキルに主眼を置いて選考しています。今ITスキルがそれほどなくても、自分で考えて仕事ができる人がであればITスキルはいずれ身についていくと考えています。学生に応募動機を聞いてみたところ、『健康経営に取組んでいるから』といった声が多かったです。従業員の健康を大切にしていることや、福利厚生に力を入れていること、離職者がほとんどいないことなどから、従業員をとても大切にしている会社だと捉えていただけているようです。」

「入社3年以内の離職者はゼロです。また、会社設立後20年間は、定年退職以外の離職者はいませんでした。皆さんに長く働いてもらうことができています。」

従業員が心身ともに健康で安心して働ける働きやすい職場環境を整え、家族からも愛され応援される会社を目指しています 「“健康宣言”の基本理念では、『弊社は、社員一人一人の健康と心の充実が会社の重要な財産であり基盤であると考えています。その為、社員全員が心身ともに健康で安心して働ける働きやすい職場環境を整え、社員本人はもちろんのこと、ご家族の方々からも愛され応援される会社になる事を目標とします。』ということを掲げています。これは、私(杉田さん)の正直な気持ちを文章にしたものです。トップダウンではなく、常にフラットな関係で、思ったことがなんでも言いやすい環境となるよう心がけており、風通しの良い職場環境が実現できていると思います。今後も、従業員本人が積極的に取り組める業務内容や職場環境になっているかということを丁寧に見極め、必要な調整を行い、従業員が活躍できる環境を作っていきたいと考えています。」

【取材協力】株式会社SET
(2025年9月掲載)